SとFのあいだで今日も迷子

書評ブログです。SFやミステリ、新書、コミックなどジャンルは多岐にわたります。

「マザーコード」(早川書房)感想

 

 

面白い?:やや冗長な気もするが面白かった

 

どんな本?:舞台は2049年。狙った対象だけを殺傷するように開発された細菌兵器が、人間の思惑を外れ、無差別・無際限に感染するウイルスとなって世界中に広まってしまう。

打つ手がなく、存亡の瀬戸際に立たされた人類は、<マザー>と呼ばれるロボットに遺伝子操作によって免疫を持った子どもたちを託し、破滅した世界での人類の再生を願うが…という物語。

 

訳者あとがきにもあるが、印象としては、作者が影響を受けたという「新世紀エヴァンゲリオン」+「15少年漂流記」。

 

人類滅亡後の世界で、子どもたちを育てるよう作られた<マザー>と、遺伝子操作された子どもたちの関係は正にエヴァそのもの。

<マザー>は機体の中が簡単な居住区、コクピットのようになっている。

子どもたちは<マザー>に対して、温もりや安心感を覚えるが、どこか怖さや得体のしれなさも感じている。

そういったギミック、心情両面でエヴァによく似ていると思う。

 

ちなみに<マザー>の外見について自分は、ジブリの「天空の城ラピュタ」に出てくるロボット兵を思い浮かべながら読みました。

 

物語は<マザー>に育てられた子どもたちが、頼れる大人もいない世界で、なんとか生き抜いていこうとしていく様が一つの軸として進んでいくが、その感じが15少年漂流記っぽいなと思った。

もしくはアニメに詳しい人はピンと来るかも知れないが、「無人惑星サヴァイヴ」と言えばイメージしやすいかもしれない。

 

基本的には面白く読めました。ただちょっと長い。中〜後半はちょっとダレる。もっと簡潔に詰められたんじゃないかなと思います。

物語の終わり方に関しても個人的にはあまり納得していないかなあ。うーん。これで終わり?というか、その先をもっと書いてほしかったなあと思います。

 

ところでウイルスによって滅ぶ世界

これまでにもSF界では使いに使い古されたテーマですが、今、こうやってリアルにコロナを体験した上で読むと、こうも真に迫るというか、ああもうリアルがフィクションを超えてしまったんだなあと、そう実感しました。

 

 

【アークナイツ】マドロックを引いた

みなさん、引けましたか?

 

私は、引きました👏

 

ということで、現在アークナイツで開催中のピックアップスカウト「勿忘草」から

限定のロスモンティス

 

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マドロックを、引けました!

 

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貯め込んでた玉と石+貰った10連チケット+微課金=だいたい70連くらい

 

資金と資源の問題から、マドロックを先に育成してロスモンティスは後回しにしようと思っています。

現在マドロック昇進1レベル70、スキルレベル7にまでは上げました。

 

少し使ってみた感想。☆6は昇進2にしないと使いづらいオペレーターもいますが(自分の大好きなヘラグ将軍とか)、マドロックは昇進1でも使い易い部類だと思います。

まず重装かと言われると、重装か?となりかすね(笑)現段階では意外とダメージを食らう。ただスキルと素質でさっさと回復するのでそこまで気にはならないけど、今の中途半端な状態だと大物を相手させるのはちょっとためらう。

攻略サイト、動画等で言及されていると思うのでご存知の方も多いと思いますが、ブレミシャインとのシナジーは結構使用感が変わる。

自己完結型なので、置いてしまえばほぼ目を離した状態でも1レーン封鎖できるのはかなり楽ですね。

将軍も自己完結型ですが、こちらはH Pの減少に合わせてスキル2か3を発動させる感じなのでそこが少し違うかな。

 

ということで、マドロック。昇進1でも実感できるほど強く使い易いオペレーターだとおもいます。

頑張ってなるべく早く昇進2にしたいな。スキル2とか特化してしまえば、ブレミシャインとのシナジーで常時発動みたいな感じになるみたいなんですよね。

早くその完成形をみて見てみたいところです。

 

 

 

「6600万年の革命」(東京創元社) 感想

 

6600万年の革命 (創元SF文庫)

6600万年の革命 (創元SF文庫)

 

面白い?:正直微妙でした。

 

どんな本?:全宇宙中にワームホールを作る任務を負った宇宙船エリオフォラ。通常の運行はAIに任せられている。人間の乗組員はAIが判断できない問題に遭遇した時のみ、冷凍睡眠から覚醒させられる。

主人公のサンデイは任務に忠実で、船のAIとも良好な信頼関係を築いていた。

ある覚醒の時、AIに管理されていることに不信を抱く別の乗組員から、AIに対する反抗計画を持ちかけられるが…という物語。

 

著者のピーター・ワッツは「ブラインドサイト」や「巨星(短編集)」などの邦訳で知られるハードSF作家。それらの作品と本作は同じ世界観を有しているようだが、これ単体で読んでも問題はないようです。というか自分も著者の邦訳作品は全部読んでるはずだけど、全く繋がりに気づかなかった(笑)

 

まず、面白いかと言うと、なかなかそうは言い切れない。訳文のせいなのか、原文からしてそうなのか、とにかく読みづらい。

既訳作品を読んだ時にそう感じた記憶は無いので、本書のみの問題だと思われます。

 

主人公の主観視点のみで語られるので、背景説明が不足してるからというのが一つ。

AIに対して反旗を翻すのもす主人公ではなく別の乗組員で、主人公はあくまで巻き込まれる側。主人公が主体的な行動は起こさない。その反抗計画が明かされるのも物語の半分も過ぎた辺りです。なので、背景説明もなく、主人公がなんの話をしているのか要領を得ないまま、かなりのページ数を我慢して読まなくちゃいけません。

 

出だしと過程がどうあれ上手く着地できればそれなりの読後感というか、物語を読んだ、体験したという満足感を得られると思いますが、お世辞にもきちんと終われているとは思えません。

本編の後に、解説曰く「ボーナストラック」である別主人公による短編が付属していますが、これも本編を補完するものでは無く、さらに混迷を深めるものになっています。

 

結局、最初から最後まで置いてけぼり感の強い作品だったなというのが、個人的な感想です。

悪い点ばかり挙げましたが、渡邊利通氏による解説は面白かったです。自由意志と神に関する考察ですが、この短い作品でここまで読み解けるということは、単に自分の読み方が下手だった可能性も否めないのかなと思います。

「転送者 皆川亮二短編集」感想

 

 面白い?:面白い!皆川亮二ファンの方はもちろん、名前はどこかで聞いた気がするけど読んだことがない方向けの入門書としても。皆川亮二の魅力が詰まっている。

 

自分は短編が好きです。何十年続く長期連載も凄いけど、一冊の短編集もそれに匹敵すると思っている。

短編集を読むと、その作者の引き出しの多さに触れることが出来ます。一つの長編では分からなかった意外な一面を発見することもあります。

また、短編は長編ほど長々とあれやこれやを説明することができないので、簡潔に、切れ味鋭く、無駄を削ぎ落とすことが求められ、より作者の力量が求められると思っています。

 

本短編集で皆川亮二という漫画家の意外な側面を見れたという意味では、「ユーキャンドゥーイット」がかなり好きです。まさかの野球漫画。

球漫画って難しいと思うんですよね。まず投げたり打ったり走ったりの動作は、人体の描き方を熟知していないと変な感じになっちゃうし迫力も出ない。150キロで投げられるボールを静の世界で表現しなくちゃいけない。

この短編では皆川亮二の画力の高さを改めて感じさせます。本当に上手い。いつか連載で野球漫画を描いてほしい。

物語のコミカルさ、運び、そしてオチまでよく出来ていて、めっちゃ面白いですよ。

 

次。表題作の「転送者」。やっぱり初期の皆川亮二の画って良い。自分は「スプリガン」が大好きで、そのスプリガンの後に描かれたというこの短編もかなり好きです。

まあどう見たって主人公が御神苗…なのは置いといて(笑)

 

「S.O.L」でもそうだけど、皆川亮二って一般人のふりした超人を描くのが好きなんだなあと思いました。スプリガンの御神苗、染井吉乃、ARMSのラフティングパンサー、D-LIVE斑鳩悟などなど。この短編ではただのおばちゃんが滅茶苦茶に強い。絶対何かしらの二つ名を持つ傭兵であることは間違いない。

 

「THE  KILLING  PAWN」。これも良かったです。実に短編らしい短編。原作はなんとあの進撃の巨人諫山創

起承転結もクソもないワンアイディアの一点突破。あまりに無茶苦茶なんでかなり笑いました。画力の無駄遣いだよ!

ユーキャンドゥーイットやSOLもそうだけど、シュールな笑いが好きですよねえ。

 

以上。とても満足感のある短編集でした。オススメです。

 

 

「パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に」(東京創元社)感想

 

 面白い?:少しイメージと違ったけど、面白かった!

 

どんな本?:原書は2012年に刊行された「Armored」。パワードスーツをテーマに書かれたアンソロジー。原書には何と23もの短編が収録されていたそうだが、邦訳版はその中から12の短編を抜粋したもの。

 

パワードスーツといえば、自分はドライな、道具として使用するものとしてイメージすることが多いです。

パワードスーツとして一般の方でもパッと思い浮かぶのはアイアンマンとかでしょうか。

映画好きな方は「All you need is kill」のトム・クルーズが着てたスーツや、「エリジウム」のマット・デイモンが装着していたのを思い出す人もいるでしょうし、漫画「GANTZ」のガンツスーツや、ゲームのコールオブデューティにもパワードスーツがギミックとして使われていました。

 

本書に登場するパワードスーツは、どれもかなり高度なAIが備わっている場合が多いです。

人間にも劣らない人格を持ったスーツは、道具というより、よりナマっぽい印象が強い。

本書に収録された作品では、所有者とスーツの人格の重なり合いや、意識の問題にまで踏み込んだものが多いなと感じました。

 

以下、本書の中で個人的に好きな作品を数点紹介したいと思います。

 

ノマド」 カリン・ロワチー

 

本書で登場するパワードスーツは「ラジカル」と呼ばれ、憲法により基本的な権利を保障された知性が備わっている。ラジカルはある1人の人間と強い結び付きを持ち、ラジカルと一体になることを「融合」と呼んでいる。

あるギャングに所属するラジカルのマッドは、装着者を亡くしてしまい、次の装着者を選ばず単独で生きていくことを選ぶ。そこへマッドの前装着者の死の真相を知っているというギャングの新入りが現れ、自分との「融合」を持ち掛けるが…と言う物語。

パワードスーツSFというより、ウィリアム・ギブスン的なサイバーパンクっぽい作品。独特なワードセンスも黒丸尚の訳文を思い出させる。

 

 

外傷ポッド アレステア・レナルズ

 

戦場のど真ん中で深刻な傷を負った兵士のマイクは、治療用のユニットを装備したパワードスーツ=外傷ポッドに収容される。

昏睡状態に陥ったマイクは意識だけを覚醒させ、外傷ポッドを通して戦場の様子を偵察するうちに、やがて自身の変化に気付いていく…という物語。

これも実はあまりパワードスーツは関係がない。傷を負って沈黙する肉体と、頑健な外傷ポッドの間を行き来するマイクの精神の変容が物語の中心になる。

意識の在りかと「私」を定義するものは何かという哲学的な示唆に富んだ作品。

 

 

ドン・キホーテ キャリー・ヴォーン

 

実は既にパワードスーツは実用化されていたのだとしたら?という歴史のifを描いた短編。

歴史ifを描いた作品はこれともう一編収録されているが、自分はこのドン・キホーテの方が好き。

スペイン内戦末期の1939年。新聞記者の主人公は、勝敗の決したと思われる戦場で、勝利している側の陣営が甚大な損害を被っている光景を目の当たりにし、追い詰められた側の陣営に戦局をひっくり返す秘密兵器の存在を嗅ぎ取るが…という物語。

パワードスーツと呼ぶにはあまりに無骨な兵器の描写が好き。抑制された文体とラストのオチが好き。トンデモ兵器が数多く開発された第二次世界大戦においては、ひょっとしてこの作品のようなパワードスーツが密かに作られていたのではという微妙なリアルさとロマンが良い。