「転送者 皆川亮二短編集」感想
面白い?:面白い!皆川亮二ファンの方はもちろん、名前はどこかで聞いた気がするけど読んだことがない方向けの入門書としても。皆川亮二の魅力が詰まっている。
自分は短編が好きです。何十年続く長期連載も凄いけど、一冊の短編集もそれに匹敵すると思っている。
短編集を読むと、その作者の引き出しの多さに触れることが出来ます。一つの長編では分からなかった意外な一面を発見することもあります。
また、短編は長編ほど長々とあれやこれやを説明することができないので、簡潔に、切れ味鋭く、無駄を削ぎ落とすことが求められ、より作者の力量が求められると思っています。
本短編集で皆川亮二という漫画家の意外な側面を見れたという意味では、「ユーキャンドゥーイット」がかなり好きです。まさかの野球漫画。
野球漫画って難しいと思うんですよね。まず投げたり打ったり走ったりの動作は、人体の描き方を熟知していないと変な感じになっちゃうし迫力も出ない。150キロで投げられるボールを静の世界で表現しなくちゃいけない。
この短編では皆川亮二の画力の高さを改めて感じさせます。本当に上手い。いつか連載で野球漫画を描いてほしい。
物語のコミカルさ、運び、そしてオチまでよく出来ていて、めっちゃ面白いですよ。
次。表題作の「転送者」。やっぱり初期の皆川亮二の画って良い。自分は「スプリガン」が大好きで、そのスプリガンの後に描かれたというこの短編もかなり好きです。
まあどう見たって主人公が御神苗…なのは置いといて(笑)
「S.O.L」でもそうだけど、皆川亮二って一般人のふりした超人を描くのが好きなんだなあと思いました。スプリガンの御神苗、染井吉乃、ARMSのラフティングパンサー、D-LIVEの斑鳩悟などなど。この短編ではただのおばちゃんが滅茶苦茶に強い。絶対何かしらの二つ名を持つ傭兵であることは間違いない。
「THE KILLING PAWN」。これも良かったです。実に短編らしい短編。原作はなんとあの進撃の巨人の諫山創。
起承転結もクソもないワンアイディアの一点突破。あまりに無茶苦茶なんでかなり笑いました。画力の無駄遣いだよ!
ユーキャンドゥーイットやSOLもそうだけど、シュールな笑いが好きですよねえ。
以上。とても満足感のある短編集でした。オススメです。